重症筋無力症( MG )
概要
- 筋肉の力が弱くなる病気で、特に同じ筋肉を何回も動かしていると力がでなくなってくるのが特徴です。
- 平成21年では全国で16431人の登録があります。(10万人あたり約13人の登録)
- 男女別では女性に1.5-2倍多いとされています。
原因
- 神経筋接合部の筋肉側(信号の受け手)に存在するいくつかの分子に対して 自己抗体 が産生され、神経から筋肉に信号が伝わらなくなるために筋力低下が起こります。
- 自己抗体の標的として最も頻度の高いのがアセチルコリン受容体で全体の85%程度、次に筋特異的 受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)で全体の数%と考えられています。
- 残りの数%(全体の10%未満)の患者では、どちらも陽性にならず、自己免疫疾患としての標的分子が約90%の患者で明らかになったことになる。しかし、自己抗体が患者体内で作られてるのかは、いまだ不明です。
- 一方、抗アセチルコリン受容体抗体を持つ患者さんの約75%に胸腺の異常(胸腺過形成、胸腺腫 )が合併ことより、何らかの胸腺の関与が疑われています。
症状
眼の周りの筋肉
まぶたが落ちてくる、ものが二重に見える、斜視、シャンプーが目にしみる、目が疲れる、まぶしい
口の周りの筋肉
ものがかみにくい、のみこみにくい、つばがあふれる、食べたり飲んだりするとむせる、 しゃべりにくい、鼻声になる
顔の筋肉
表情がうまくつくれない、笑おうとしても怒ったような顔になる
手足の筋肉
持ったものを落す、字が書けない、立てない、歩けない、階段が昇れない、洗濯ものがほせない、おふろで頭が洗えない
呼吸筋
息がしにくい
※程度は人により異なるが、しばらく使っていると悪くなり、休むと回復しますことが多い。心臓や腸の筋肉は侵されない。遺伝する事もない。
対処法(対症療法と根治的な免疫療法 があります)
【対症療法】
- コリンエステラーゼ阻害薬という、神経から筋肉への信号伝達を増強する薬剤を使用。 (一時的な対症療法)
- 治療の基本は 免疫療法 で、この病気の原因である抗体の産生を抑制したり、取り除く治療になる。抑制には、ステロイド薬、免疫抑制薬があり、ステロイド薬は飲み薬としても点滴としても使われています。
- そのほかには、抗体を取り除く 血液浄化療法 、大量の抗体を静脈内投与する大量ガンマグロブリン療法、補体C5を 特異的 に阻害する抗体製剤があり、患者さんの症状や状態に応じて、治療方法が選択されています。(これらは、体内の抗体を区別なく除去したり、抗体の作用を 非特異的 に押さえたりする治療で、疾患特異的な治療ではありません)
- 胸腺の異常として、胸 腺腫 を合併する場合は、まず外科的にこれを取り除く必要があります。胸腺腫は早期に発見されば場合は、一括して切除でき、 生命予後の良い腫瘍。
- 胸腺腫がない場合の胸腺摘除術については、国際的な研究で有効性と安全性が示されていますが、眼の症状だけ、アセチルコリン受容体抗体が陰性、小児や高齢者に対する有効性は不明です。
- MuSK抗体陽性患者では、血液浄化療法の一つである免疫吸着療法、補体C5を特異的に阻害する抗体製剤、胸腺摘除術の効果は期待できません。