頭側頭葉変性症(FTLD)

概要

前頭側頭葉変性症は主として初老期に発症し、大脳の前頭葉や側頭葉を中心に神経変性を来たすため、人格変化や行動障害、失語症、認知機能障害、運動障害などが緩徐に進行する神経変性疾患です。

原因

前頭葉や側頭葉に限局した神経細胞の脱落がみられ、残存神経細胞にはタウ蛋白やTDP-43、FUSなどの異常蛋白が蓄積していることが知られているが、なぜこのような変化が起こるかは解っていません。家族性の場合には、タウ遺伝子、TDP-43遺伝子、プログラニュリン遺伝子などに変異が見つかっています。

症状

【行動障害】

  • 常同行動:毎日決まったコースを散歩する常同的周遊(周徊)や同じ時間に同じ行為を毎日行う時刻表的生活が認められます。
  • 脱抑制・反社会的行動:礼節や社会通念が欠如し、他の人からどう思われるかを気にしなくなり、自己本位的な行動(我が道を行く行動)や万引きや盗食などの反社会的行動がみられます。
  • 注意の転導性の亢進:一つの行為を持続して続けることができない注意障害がみられます。
  • 被影響性の亢進:外的刺激に対して反射的に反応し、模倣行動や強迫的言語応答がみられます。
  • 食行動変化:過食となり、濃厚な味付けや甘い物を好むような嗜好の変化がみられます。
  • 自発性の低下:自己や周囲に対しても無関心になり、自発性が低下います。
  • 共感や感情移入が困難となります。

【言語障害、意味記憶障害】

  • 意味記憶障害:相貌や物品などの同定障害がみられます。
  • 意味性失語:言葉の意味の理解や物の名前などの知識が選択的に失われる語義失語が出現します。
    語義失語では、単語レベルでは復唱も良好であるが、物の名前が言えない語想起障害や複数の物品から指示された物を指すことができない再認障害がみられます。
  • 発語量が減少し、失文法や失構音、失名辞などの運動性失語が潜行性に出現し、発話が努力様で発話開始が困難となり、会話のリズムとアクセントが障害される言語障害は進行性非流暢性失語にて見られる症状ですが、(行動異常型)前頭側頭型認知症においても認められることがあります。

【その他】

  • 筋萎縮や筋力低下を呈する運動ニューロン疾患を示すことがあります。
  • 認知機能障害、運動障害なども認めることがあります。
  • 進行性核上性麻痺や大脳皮質基底核症候群の臨床症状を示すことがあります。

治療法

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの抗うつ薬が行動異常の緩和に有効であるという報告がありますが、根本的治療薬はいまだ確立していません。