パーキンソン病(PD)
概要
- 50~65歳で発症することが多く、高齢になるほど発病する確率が高まるといわれています。
- 手足の震えや筋肉のこわばりなど、運動機能に障害が現れる病気。
- 体の片側から出始め、次第に反対側に広がる特徴があり、ゆっくりと進行します。
- 運動障害が現れるため、動くことを避けて生活の質が下がり、最終的には寝たきりになる人もいます。
原因(脳内物質の減少とされている)
「ドーパミン 」の減少
脳内では、神経伝達物質が細胞間の情報伝達を介在していますが、パーキンソン病を発症すると、脳内の快楽物質とも呼ばれる神経伝達物質「ドーパミン」が減少し、それによって体の運動機能に障害が出るとされています。
「黒質」の細胞が減少
パーキンソン病の症状の原因と考えられているドーパミンの減少は、中脳の中にある「黒質」と呼ばれる部分で起こる。パーキンソン病の原因ははっきりと解明されていませんが、黒質の中のドーパミン神経が変性して剥がれ落ち、その部分に異常なタンパク質が集まることが確認されています。
症状(「運動症状」と、
それ以外の「非運動症状」の主に2種類があります)
【運動症状】
・手足の震え
パーキンソン病の初期症状の中でもわかりやすいものが手足の震え。
手を動かさず安静にしているときに、手足に震えが見られる場合は、パーキンソン病を疑ったほうが良いかもしれません。
・手足のこわばり
手足の筋肉が硬くこわばり、スムーズに動かすことが難しくなります。リラックスしようと思っても体の力をうまく抜けず、全体的に動き方が不自然になります。
・姿勢反射(転びやすい)
体のバランスを保つことができず、姿勢を変えるときの反射が鈍くなります。いったん歩き出すと、スピードが速くなったり、方向転換が難しくなったりします。
転ばないようにしようとして歩行が小刻みになり、歩行速度が速くなることもあります。
・無動、寡動
運動麻痺や筋力の低下がないにもかかわらず、日常生活の動作が遅くなります。
自発的な行動が少なくなり、筋力が低下してますます活動しなくなるという悪循環に陥る可能性があります。
初期のパーキンソン病では、身の回りのことは行えますが、症状が進行するにつれ、排泄や着替えといった日常生活に必要なことが自分でできなくなり、介護が必要になります。
静止時振戦 | 止まっている時も手足が震える |
無動 | 動作が遅くなる |
筋固縮 | 筋肉がこわばる |
姿勢反射障害 | バランスを崩した時に立て直せない |
【非運動症状】
・自律神経症状
外部からの刺激に対して無意識に体の機能をコントロールする役割を担うのが自律神経ですが、パーキンソン病を患うと、この自律神経が乱れ、「便秘」「排尿障害」「発汗異常」などを引き起こします。
・精神症状
病気に対するショックやパーキンソン病そのものの症状により、うつ病を発症したり、幻覚や妄想が現れたりすることがあります。
これらの精神症状は、治療薬の副作用として見られる場合もあるので、治療のために薬を服用する際は、医師によく相談しましょう。
・睡眠障害
パーキンソン病が進行すると、心身に安らぎを与え精神の安定をもたらす「セロトニン」などの神経伝達物質の分泌にも影響が及び、不眠症になることがあります。
深く眠っている時間が減ったり、眠りの最中に異常行動が現れたりしていないかどうか、注意深く観察してください。
・認知機能障害
外からの刺激に鈍くなったり、判断力や記憶力が低下したりします。場合によっては、認知症とよく似た状態になることがあります。
予防法
- 病状を悪化させないためには、適度に運動をすることが大切
- 日常生活の中で、好きなことや得意なこと行い、「チロシン」を含む食品を食べ、意図的にドーパミンを増やす
治療法
- トレーニングやストレッチなどを取り入れ、リハビリを行う
- 代表的な治療法の薬物療法(L-ドパとドパミンアゴニストなど)を行う
- 脳内の特定の部位に熱を加える手術法である「凝固術」、脳の深い部分に電極を設置し、胸には専用の装置を埋め込んで絶えず刺激を与え、神経細胞の活動を休ませる「脳深部刺激療法」などの脳の手術を受ける
※パーキンソン病の原因と考えられる遺伝子が見つかり、遺伝子治療についての研究が行われているだけでなく、いろいろな細胞に分化する機能を持つ「iPS細胞」や「ES細胞」の移植による治療も注目されています。