筋萎縮性側索硬化症(ALS)

概要

  • 主に中年以降に発症
  • 一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患です。
  • 病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。

原因

  • ALSのうち約5%は家族歴を伴う(家族性筋萎縮性側索硬化症(家族性ALS)とよばれる)
  • 家族性ALSの約2割では、フリーラジカルを処理する酵素の遺伝子の変異が報告されている(ALS1)。
  • その他にも、原因遺伝子が次々に報告されている。
  • 孤発性ALSの病態としては、フリーラジカルの関与やグルタミン酸毒性により神経障害をきたすという仮説が有力。
  • 孤発性ALSの多数症例を用いてゲノムワイドに疾患感受性遺伝子を探索する研究も進行中。

症状(下記3型に分けられることがある)

  • 上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す上肢型(普通型)
  • 構音障害、嚥下障害といった球症状が主体となる球型(進行性球麻痺)
  • 下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、 二次運動ニューロンの障害が前面に出る下肢型(偽多発神経炎型)

一方で、進行しても目や耳はほとんど影響なく機能していることが1つの特徴です。

※これ以外にも、呼吸筋麻痺が初期から前景となる例や体幹筋障害が主体となる例、認知症を伴う例もあり多様性がみられます。

ALSの症状 筋萎縮
嚥下障害
呼吸障害など

対処法

★ALSの進行を遅らせる作用のある薬を使用
 
★対症療法(様々の症状を軽くする方法)

1) 筋肉や関節の痛みに対の毎日のリハビリテーション

ALSのリハビリ 嚥下
コミュニケーション
呼吸

2) 体の不自由・不安等から起こる不眠に対して 「睡眠薬」や「安定剤」を使用。

3) 呼吸困難に対して
鼻マスクによる非侵襲的な呼吸の補助と気管切開による侵襲的な呼吸の補助。
気管切開が必要な時期になると定期的に痰(たん)の吸引が必要です。
人工呼吸器を使用する場合であっても基本的には在宅での生活。
人工呼吸器や吸引器には電気が欠かせず、地震や台風などの災害時におこる停電に備えて予めの準備も必要です。。

4) のみ込みにくさに対して
食物の形態を工夫(原則として柔らかく水気の多いもの、味の淡泊なもの、冷たいものが 嚥下 しやすい)する、少量ずつ口に入れて嚥下する、顎を引いて嚥下するなど摂食・嚥下の仕方に注意してください。
進行した場合には、お腹の皮膚から胃に管を通したり(胃ろう)、鼻から食道を経て胃に管をいれて流動食を補給したり、点滴による栄養補給などの方法があります。
現在は「胃ろう(PEG)」で栄養補給する方法が一般的であるが、呼吸機能が悪くなってからの「胃ろう」の造設はより危険が伴います。

5) 話しにくい、手の力が入らないなどの症状進行に対して
家族や他のヒトとのコミュニケーションが大変になるため、早めに新たなコミュニケーション手段の習得を行うことが大切です。
「文字盤」とよばれるコミュニケーションボードや、 体や目の動きが一部でも残存していれば、適切なコンピューター・マルチメディア(意思伝達装置)および入力スイッチの選択により、コミュニケーションが可能です。